隠相撲7



いよいよ私としずねの二勝同士の対戦です。

私はマワシ代わりの帯をもう一度きつく結び直し気合いを入れます。

しずねも同じように帯を締めなおしました。

お互い長期戦は覚悟の上のようです。

私としずねが初めて対戦したのは、幼稚園の頃のお相撲大会。

その時どっちが勝ったか覚えていませんが、両親の話だと私だったそうです。

以来、柔道を二人で始め、わんぱく相撲も二人で参戦して、近所の神社の奉納相撲にも参加をして……と、

ずっと対戦が続いています。

戦績はやっぱりずっと互角ですが、勝敗がはっきりする格闘技だから、お互いに本気で闘えるんだと思います。

だからこそ、絶対に負けられない相手……。

「……じゃあ、いくよ……構えて……」

今回の行司役は桃ちゃんです。

私としずねが本気モードの顔をしていると察して、緊張しているようです。

私はゆっくりと両手をつきました。

身体中がビリビリとしています。

特にきついのが両帯です。

どうやら、真っ向勝負を仕掛けてくるつもりのようです。

もし最終戦でしずねがこのビリビリをマスターしていたら、

多分私も真っ向勝負を狙っている事を察知しているはず。

私から送れること数秒、しずねの両手が布団につきます。

「……のこった!!」

瞬間、私としずねは同時に動き、バシッと言う音と共に左四つに組み合いました。

「……んっ……」

「……くっ……」

私としずねが僅かに声を漏らします。

どうやら千秋楽の再来のようです。

両足をしっかりと開いて防御の態勢、腰を落としているから並大抵の崩しでは揺らぎません。

マワシ代わりの帯は握りやすく、一度掴んだら絶対に振りほどくのは無理。

残された道は、ビリビリの消耗戦のみです。

「はっけよーい……」

「……うくっ……むっ……」

「……んっ……んくっ……」

桃ちゃんが囃しますが、この状態は動けません。

私が足を狙おうと力を込めますがしずねは動じません。

逆に私のお尻がビリッとします。

私は腰を僅かに落とし、しずねの投げを封じ込めました。

見た目からはほとんど分からない攻防。

ですが、この攻防を制す事がなによりポイントです。

この攻防を制することは、この勝負の流れを掴むのと同じ事。

絶対に負けられません。

「……はっけよーい……」

「くっ……んっ……はぁ……はぁ……うっ……あっ……」

「んっ……うっ……はぁ……はぁ……あっ……くっ……」

私としずねは一歩も動かない激しい攻防を続けます。

私の仕掛けをしずねが潰し、しずねの仕掛けを私が潰し。

互いに全ての動きを完璧に封じ込めています。

汗が次第にじっとりと流れ始め、息も乱れ始めます。

ですが、組み手は全くの互角。

お互い左四つでマワシを取り、腰を引いている態勢ですから、巻き返すどころか、

相手の組み手を探る隙間もありません。

このままでは、本当に埒が明かない状態です。

「くっ……」

数分が経った頃、私は僅かに身じろぎをしました。

次第にマワシの食い込みがきつくなってきたんです。

ずっとマワシを取られ続けた所為で、アソコへの圧迫が辛くなってきたようです。

「んっ……」

しずねが僅かに吐息を漏らしました。

理由は、私と同じ。

どうやら互いに感じ始めてしまったようです。

「はっけよーい……」

「はぁ、はぁ、はぁ……んくっ……んぅっ……」

「はぁ、はぁ、はぁ……んぁっ……あくっ……」

少しずつ、私としずねの身体が揺れ始めました。

体力的にもそうですが、何より身体が感じ始めてしまったのが辛いところです。

でも、倒すチャンスはお互いここにしかない。

本来相撲の組み手ならこのまま寄りや吊りで土俵の外に出すのを狙いますが、

しずね相手にそんな甘い話はありません。

お互い条件は同じ。

ならばとる先方はただ一つ、ビリビリを利用したカウンターの読み合いです。

それにしても、ここまで到達するまでに10分以上がかかるなんて……。

「はぁ、はぁ、はぁ……うんっ……」

「はぁ、はぁ、はぁ……あんっ……」

「……はっけよーい……」

「……せやっ!!」

桃ちゃんの囃しを合図に、私は上手投げを仕掛けました。

「うくっ……りゃあっ!!」

しかし、これはしずねに凌がれます。

しずねは足を素早く運び、下手捻りで反撃をしてきました。

ですが、私はこれをビリビリで予期しています。

「んっくっ……はぁっ!!」

「うわぁっ!?」

下手捻りを凌いだ瞬間、私は右下手を思い切り跳ね上げました。

私の新しい必殺技、呼び戻し!

しずねの身体が宙を舞い、布団の土俵に叩き付けられました。

本当だったらこれで勝負ありなんですが、残念ながら千秋楽ルールです。

私はまずはしずねの反撃を抑えるため、横四方固めで押さえ込みました。

「えいっ!」

「うんっ……」

しずねが苦しそうな声を漏らしました。

私の腕に押さえられたアソコが感じたんだと思います。

「ふっ!」

「うあっ!?」

ですが、私は思わぬ反撃に遭いました。

しずねは下から私の股間を押さえたんです。

押さえ込んだのは私ですが、態勢としては互角。

しずねの、まさに捨て身の反撃です。

ここからは、お互い何をするか分かっています。

「んっ……くっ……はっ……あっ……」

「はっ……あっ……んっ……んっ……」

お互いアソコを捕らえた腕を僅かに揺すって擦れさせます。

この動きで一気に絶頂まで持ち込むのが狙いです。

「はぁ……はぁ……あっ……ひっ……」

「はぁ……はぁ……んっ……くぅ……」

押さえ込んでいる私ですが、しずねの反撃は効果的でした。

しずねが悶えてもがくたびに私のアソコにも刺激が走ります。

堪らず私の身体が強張るとしずねのアソコに刺激が走り、そしてまたしずねが悶えて私が感じて……。

完全に泥沼です。

逃げるに逃げられない攻防に突入してしまいました。

「はぁ、はぁ、あっ……んっ!」

「はぁ、はぁ、ひっ……くっ!」

徐々にですが、完全に高まってきています。

私もしずねも少しずつ声が荒くなってきました。

この感じだと激しいイキ方ではなくて、小波のように押しあがってくるようなイキ方になりそうです。

「うんっ……んっ! はぁ……はっ……うんっ……うっ……んんんっ…………」

「はっ……あっ……はぁ……はくっ……ひっうっ……あっ……はぁぁぁっ…………」

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」

とうとうイってしまいました。

押さえ込んで多少は有利だったはずなのに、これでは条件はほとんど変わりません。

とにかく、攻められるのは上にいる私のはず。

「はぁ、はぁ、はぁ……んっ……」

私は感覚が遠くなっている身体に鞭打ち、何とか横四方からマウントを取りに行きます。

「はぁ、はぁ、はぁ……くっ……」

しかし、ここはしずねが上手いテクを見せて、私の押さえ込みから巧みに逃げました。

あっという間にガードポジションの完成です。

「くっ……」

まずい……全然身体がしっかりと動いてくれない……。

私は内心の焦りを隠すようにしずねの喉にギロチンチョークを仕掛けようとしました。

その瞬間、私の喉にビリビリが走りました。

「せいっ!」

「あぐっ!?」

なんと、しずねが下から三角締めを仕掛けてきたんです!

まったく予想していなかった私は、完全に捕まってしまいました。

「くっ……くあっ……あっ……」

私は今にもタップしそうに手を彷徨わせます。

完全に不意を突かれてしましました。

「それっ!」

「あっ!? ぐあっ……あっ……」

私が苦しんでいるうちにあっという間に上下逆転されてしまいました。

私は心の中では悲鳴をあげています。

足を絡め取られ胸を重ねられアソコを重ね、もがけばもがくほど苦しく気持ち良くさせられる、

しずねの必殺の押さえ込み、肩固めです。

この態勢にだけは、絶対になっちゃいけなかったのにっ!!

「はぁ、はぁ、んっ……ほら、ギブアップしたら?」

「はっ……あっ……ノーッ……このくらい……」

「このくらい? このくらいでイカされたのは何処の誰だっけ?」

「くっ……あっはっ……くんっ……」

「あーあー、気持ち良くて悶えちゃって……ギブアップじゃないの?」

「あっあっ……ノーッ……くっ……うあっ……はっ……あっ……」

私はなんとか逃げようと身体を捩りますが、何度動いても胸とマワシが擦れあって気持ちよくなるばかりです。

だからと言って動きを止めればしずねが自分から揺すってきます。

完全にアリ地獄に引きずりこまれた気分です。

汗の滑りが本来は苦しいはずの動きを気持ちよくさせてしまっています。

「はぁ、はぁ、あっあっ、はぁ、はぁ、あぁっあっ……」

「ほら、ギブアップは? お姉ちゃん?」

「あっあっ……ノーッ……んっ……くっ……はっあっ……ああっ……あっあっ……はっあっ……」

い、いけない……ま、また気が遠く……なってっ……きたっ……。

……こ、このままじゃ……イカされ……っ……!!

「ああああああっ!!! ……はぁ、はぁ、はぁ……」

イカされたっ……。

「へっ……耐え切れずね……ほら、ギブアップ?」

「はぁ、はぁ、ノォー……」

「ノー? このまま締め上げれば、あんた落ちるよ?」

「うぁ……あっ……ノーッ……」

「……ちっ……」

「うあっ……はあ、はあ、はあ……」

しずねはこのままじゃ攻めきれないと感じたのか、いったん私を解放しました。

私は息を荒げながら必死に立ち上がろうとしますが、身体が言う事を聞いてくれません。

何とか立ち上がろうとしますが、感覚の全てが遠く感じます。

「はぁ、はぁ、はぁ……」

なんとか立ち上がった私ですが、完全にしずねの姿を見失っていました。

「らしくなね……隙だらけよ!」

「うぐあっ! あっ……ぐあっ……あっ……」

しずねの強烈な鯖折りです。

完全に不意を突かれました。

私は必死に逃げようとしますが、あまりの苦痛にほとんど抵抗が出来ません。

「どう? 降参する気になった?」

「くぁっ……あっ……だ、だれが……くっ……」

「へぇ、だったら逃げてみたら!?」

「あっあっ……ぐぁっ……あっ……」

私は身体を仰け反らせて何とか逃げようとしますが、本当に微動だに出来ません。

仁王立ちで抱きしめられている状態で、私はただ苦しみ悶えている状態です。

こ、このままじゃ……締め落とされちゃう……。

自由になるのは両手と……頭だけっ!!

「……………………このやろおおっ!!」

「うっ!? ぐはあっ!!」

私の渾身の頭突きです。

しずねはたまらず技を解いて後ろにヨロヨロと下がります。

「くはっ……」

ですが、私はダメージが大きく膝を落としてしまいました。

せ、背中が……。

「さすがに粘るねぇ……お姉ちゃん……」

「うっ?」

しずねは既に立ち上がっていました。

やはり苦し紛れの頭突き程度では……。

「けど、今日は負けないよ……おらあっ!!」

「きゃうっ!!」

しずねの強烈な頭突き!

私は一瞬意識の揺らぎを感じ、仰向けに倒れてしまいました。

「さぁ、トドメ♪ トドメ♪」

しずねの声がやたらと遠くに感じます。

「くっ……くっ……」

何とか頭を振って意識を取り戻そうとします。

ぼんやりとした感覚が抜けた時、私の両足は既にしずねに絡め取られていました。

い、いけない……この態勢は……。

「い、いやっ…………」

私は最後の残された力で抵抗を試みますが、全く効果がありません。

「さぁ、いくよっ!」

「あっ……うあぁぁーーっ!!」

しずねが一気にステップオーバーして完璧なサソリ固めが完成してしまいました!

私は完全に大股開きのエビ反りの態勢で悲鳴を上げます。

「ほら、ギブアップ!?」

「あぁーっ!! ノーッ!! あぁーっ!! あぁーっ!!」

「さすがに粘るなぁ……お姉ちゃんの粘りって、下手したら隠相撲1番だよね?」

「くぁぁーっ……あぁーっ……あぁぁーっ…………」

「でも、もう限界だよね? アソコに食い込んだマワシがヒクヒクしているんじゃない?」

「あぁ……あっ……ふ、ふざけ……るな……」

必死に耐え続ける私ですが、もう限界寸前です。

少し俯いただけで汗が流れ落ちるし、しずねの言う通り、

帯が異様に食い込んでアソコがヒクヒクしているのも自覚しています。

「お姉ちゃん、ギブアップ?」

「あぁーっ……あぁ……ノォ……うぅ……うくっ……あぁ……あっ……」

「……ギブアップ?」

「…………うぅ…………ギ…………ギブ……アップ…………」

私は弱々しくタップをして、負けを認めました。

…………私の、完敗です…………。

「勝負あり!」

桃ちゃんが慌ててしずねに技を解かせます。

どうやら傍目で見ていても相当私が弱っているようです。

「しずかさん、大丈夫ですか?」

瑠璃子ちゃんが心配そうに私を覗き込みます。

「はぁ、はぁ、はぁ……平気平気、お姉ちゃんはコレくらいで壊れやしないよ」

しずねが軽い口調で言っていますが、冗談じゃありません。

こっちは限界を超えて完全にダウンです。

「はぁ、はぁ、はぁ、人の気も……知らないで……」

私はやっとの思いで身体を起こしました。

「でも、いつも思うけど、二人ともそんなに本気でやってよく大丈夫だよね?」

桃ちゃんが呆れたように言いました。

「桃ちゃんと瑠璃子ちゃんに言われたく無いなぁ……」

私も呆れて言い返しました。

「でもお二人ほどタフな試合は出来ないです」

「それは謙遜だよん♪」

瑠璃子ちゃんとしずねが談笑しています。

結果として、一位しずね、二位私、三位桃ちゃん、四位瑠璃子ちゃんとなりました。

プロレスごっこのはずが、ものすごく激しい稽古になってしまいました。

やれやれ……良い稽古になったけど、最後はひどい目にあってしまった……。

「さて、汗だらけになっちゃったし、シャワーでも浴びてきたら?」

しずねが私たちを促します。

「そうね。じゃあ、浴びようか」

私も素直に賛同します。

「わーい! 浴びよう浴びよう!」

「みんなでお風呂ですか。楽しそうですね!」

桃ちゃんと瑠璃子ちゃんも賛成のようです。

「じゃあ、先に行っていて!」

「ん? しずねは?」

「あたしは後から行くから」

「……そう……」

私はちょっと不思議に思いながら、とりあえず桃ちゃんと瑠璃子ちゃんをお風呂へ案内しました。

私たちがお風呂で談笑している時にしずねも合流して、

その後は私としずねでご飯を作ってみんなで食べました。

こんな練習会なら、また開いても良いかも知れません。

そう思いました。





「ふふ〜ん♪ いい稼ぎになった♪」

「ほうほう、随分とたくさん持っているのね?」

「…………げっ…………な、なんのことでしょう、お姉さま?」

「さて、洗いざらい白状してもらおうかしら?」

「ほ、ほら、自分の闘っている姿のチェックは必要な訳で……」

「それを誰に売りさばいたの??」

「ちょ、ちょっと、お姉さま、話し合いませんか? 話し合えば分かるかと……」

「問答無用!!」

「きゃあああーっ!!!」

しずねのお小遣い稼ぎは、全額没収です。





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