隠相撲 四日目



今日は四日目、私こと“渡邉しずか”は、初日こそ落としたものの、その後盛り返し現在二勝一敗。

勝ち方も結構危なかったですけど、それでも三連勝をすれば一気に波に乗れる……はずでした。

今日の相手は「下諏訪 枝里子」さん。

現在最年長の35歳、絶頂期は大関まで上り詰めていたそうですが、今は前頭三枚目。

既にお子さんも2人いらっしゃって、10歳と8歳の女の子。

ですが、枝里子さんの身体は子どもを生んだとは思えないほど引き締まっているんです。

身長が170センチ、体重がリミットの65キロ、スリーサイズは90、65、96

髪の毛はショートカットに切りそろえていますが、スタイルも良いのでとても美人です。



実は私を隠相撲に誘ってくれたのも、枝里子さんでした。

わんぱく相撲大会で優勝したのに全国大会には出してもらえない。

理不尽な理由に泣いていた私を、枝里子さんはここに連れてきてくれました。

まだ小学6年生のときです。

それ以来、枝里子さんは相撲では私の師匠です。

13歳でこの世界に飛び込んだ私を、徹底的に可愛がってくれました。

今の私の強さは枝里子さんのおかげです。

けど、土俵の上で闘えるレベルまで到達した時、私は枝里子さんの本気を味わいました。

枝里子さんの相撲は……ちょっとHな手が得意なんです。

隠相撲では、Hな技は反則になりません。

使う選手は少ないですが、有効な攻め手の一つです。

そして、枝里子さんは隠相撲の中でも数少ないH技の使い手なんです。

そんな訳で、私と枝里子さんの対戦成績は、なんと私の〇勝十敗。

枝里子さんのH技に、私は全く成す術なく破れてきました。

確かにH技はずるいです。

その……力が抜けちゃうし、すぐに気持ちよくなっちゃいますし……。

でも、私は卑怯だとは思いません。

土俵に上がったら、そんなのは言い訳にしかならないと思います。

この上では、強者が勝ち弱者が負けるだけですから。



呼び出しを受けて私と枝里子さんが土俵で向かい合います。

枝里子さんは余裕なのか微笑みながら土俵入りの所作をしています。

実は枝里子さんは今場所を最後に引退を公言しています。

枝里子さんはここまで珍しく3連敗を喫していて、まだ初日を出していません。

いつもなら私がお得意様にされてしまいますが、今日と言う今日はそうはさせません。

私は鼻息を荒くしながら塩をまいて最初の仕切りに向かいます。

今にも飛び出しそうな私に対して、

枝里子さんは仕切り線に手を触れさせただけですっと背中を向けてしまいました。

それを見た瞬間、私は違和感を覚えました。

いつもの枝里子さんらしくないんです。

その後、二回の仕切りもやはり私は違和感を覚えます。

一体なんでだろう?

やがて時間一杯になり、私と枝里子さんは最後の仕切りで向かい合います。

「手を付いて……」

サガリを分けて私は右拳を、枝里子さんは左拳を仕切り線につけます。

次の瞬間、私と枝里子さんは同時に立ち上がりました。

「ふっ!」

私は小細工も何もせずにぶちかましを仕掛け、真っ向勝負を挑みます。

枝里子さんは押して私のぶちかましを食い止めようとしましたが、私の踏み込みの方がわずかに勝りました。

「ちっ!」

私の左手は枝里子さんの前褌を取る事に成功したのです。

このチャンスを逃がすわけにはいきません。

私はあらん限りの力で枝里子さんを引き付け、得意の四つ相撲に持ち込もうとします。

しかし枝里子さんはマワシを狙った私の右手を左肘で受け止めると、逆に右の上手で私のマワシを引きました。

こうなると私も一旦腰を引くしかありません。

「んっ!」

そう思った瞬間、枝里子さんの左手が私の胸を掴んだんです。

私は堪らずピクッと反応してしまいます。

こうなってくると恵理子さんのペースですが、弱気になったら一気に負けてしまいます。

私はひるまず枝里子さんの胸を掴み返しました。

「くっ……」

枝里子さんも声を漏らします。

私と枝里子さんは、互いに半身を取って頭をぶつけ合いながら胸を掴みあう隠相撲独特の組み手、

“ケンカ胸四つ”になりました。

胸を掴む事は有効な攻め手の一つの為、いつの間にかそんな呼び名が付いています。

形としては柔道の頭を下げて組み合った形に似ています。

「はぁ……はぁ……はっ……」

「はぁ……んっ……ふぅ……」

「……はっけよーい……」

この状態でお互いが胸を揉み合い、隙を探りあいます。

ですが、感じやすい体質の私には、この攻防はかなり不利なんです。

対して枝里子さんも多少は効いているようですが、それ以上に攻めるのが上手いんです。

私の右胸の乳首は既にコリコリに固くなってしまい、枝里子さんに弄ばれています。

「……ふぅ……ふぅ……やっ!!」

「うあっ!?」

ここで枝里子さんが仕掛けてきました。

枝里子さん得意の“胸捻り”!

下手捻りや上手捻りの応用で、胸を掴んだまま捻り倒す荒技です。

私は慌てて足を運んで残ります。

ですが、枝里子さんのラッシュは止まりません。

「ふっ!!」

「くぅっ!!」

今度は胸を掴みながらの押し!

私は堪らず状態を起こしてしまいます。

「そいっ!!」

「うあっ!!」

更に枝里子さんは四つ身の吊り合いを仕掛けてきました。

私も応戦しますが、完全に枝里子さんペースです。

なぜなら、この態勢も枝里子さんのH技の餌食なんです。

「……さぁ、今日も勝たせてもらうわよ……んっ……」

「くっ……くそぉ……くぅっ……」

枝里子さんが私のうなじに舌を這わせます。

さらに耳たぶをあま噛みされて、私は段々耐えられなくなり後ろに下がってしまいます。

ですが、枝里子さんに吊られた状態なので逃げる事が出来ないんです。

「んぅ……んっ……んっ……」

「うあっ……はっ……あっ……」

私は顎が上がって完全に枝里子さんに押されています。

やっぱりH技にはH技じゃなきゃ……。

「んっ!」

「あっ……」

この試合、初めて枝里子さんが声を漏らしました。

私は枝里子さんの首筋にキスをしたんです。

今度は枝里子さんの顎が上がります。

この隙に私は背伸びの状態から足の裏を地に付けた状態にして、更に枝里子さんの耳を嘗め回します。

今まで私はH技を使った事はありませんが、このまま負けるよりマシです!

私は今まで枝里子さんにやられた分をお返しするように枝里子さんのうなじと耳を攻めまわします。

「あっ……はっ……あっ……甘いわよっ!」

「きゃんっ!」

枝里子さんはちょっと辛そうな声を漏らしましたが、すぐに反撃に転じます。

身体をほんのわずかに揺すっただけで、重なり合っている乳首同士が擦れあったんです。

この動きは枝里子さんのオリジナル技です。

「ほらほらっ!」

「はっ……あっ! んっ!」

私は何とか反撃をしようとしますが、枝里子さん独特のテクニックに後退を余儀なくされます。

そして、とうとう私は徳俵まで追い詰められてしまったんです。

「はぁ……はぁ……さぁ、止めよ……んっ……」

「くっ……くっ……んんっ!」

これも枝里子さん得意の態勢、吊り合いでのディープキスです。

私は身体中から抜け落ちそうになる力を必死に奮い立たせ、必死に土俵際一杯で残ります。

でも残れば残るほどマワシが食い込んで、それが気持ちよくなってしまう悪循環。

この状態は、隠相撲では万全の態勢なんです。

「ノコッタノコッタノコッタ!! ノコッタノコッタノコッタ!!」

「んっ……んんぅ……んぅんっ……」

「んっ! んんっ!! んっんっ!!」

でも私も諦めません。

ちょっとでも気を抜いたら寄り切られそうですが、懸命に残り続けます。

「んっ……んぅ……んっちゅ……んっ……んはぁっ、はぁ、はぁ……」

「んっんぅ、んっんぁっ! んんぅ、んっんっ……んはぁっ、はぁ、はぁ、はぁ……」

それから更に5分近くこの態勢が続き、

枝里子さんが決め手にならないと判断して、ようやくこの長いキスでの攻防が終わりました。

ですが、枝里子さんの吊り寄りは続いています。

私の枝里子さんは吊り合いでおでこを重ねあって見つめ合うという態勢になりました。

ですがこの間も激しい吊り合いは続いているんです。

「くぅっ……くっ……強く……なったわね……」

「はぁ、あっ……あんっ……お、おかげ様で……」

「そう……んっ……いいわ……なら、これで決着よ……」

そう言いながら枝里子さんは私のお尻側の縦褌を掴みました。

私は「あんっ!」と反応してしまいましたが、枝里子さんの考えが分かっている為、同じように掴み返します。

そして示し合わせたように、同時にお互いの前の縦褌も掴みました。

隠相撲の中でも最もHな組み方、縦四つです。

寄り切りや吊り出し狙いではなく、イカせて倒すという完全決着の形の一つです。

ましで土俵際を背負っている私が圧倒的に不利です。

でも、この時私は嬉しかったんです。

この態勢は枝里子さんが創始者って言われるくらい、枝里子さんが得意な組み方です。

でも、今まではこの態勢になる前に私は負けてしまっていたんです。

ようやく枝里子さんのレベルに手が掛かりました!

「あんっ! んあっ! はっ! あっ!」

「あうっ! くぅっ! んっ! うんっ!」

私と枝里子さんの勝負は壮絶なイカせ合いに突入しました。

縦四つではマワシを前後に吊り上げ擦りあう攻防になります。

もちろんこのまま吊り上げるのも、投げるのもありですが、それは相手をイカせてからの話です。

私は自分の快感を必死に噛み殺しながら枝里子さんを攻めますが、枝里子さんも早々にはイッてくれません。

私のほうは……限界が近いです。

「ノコーッタノコッタノコッタ!! ノコーッタノコッタノコッタ!!」

「あっあっ! はっ……ああっ!! はんぅっ!!」

「はっ、はっ、あっ! はっんっ!!」

激しい攻防が続きます。

お互いの顎が上がり始め、胸の突起がぶつかり合い、腰が苦しみ悶えるように前後に揺れます。

「ああっ! あっあっ、も、もうだめぇっ!! ああぁぁぁぁっ!!!

「うっ!! んっ!! いやっ……イ、イッちゃう……あくぅぅぅっ!!」

遂に私は絶頂に達してしまいました。

身体をつんと反らし、頭のてっぺんからつま先まで真っ白になるような快感に囚われます。

同時に枝里子さんも絶頂に達したようで、枝里子さんの攻めが緩んでいます。

でも力が入りません。

この瞬間にしか逆転のチャンスは無いのにっ!

「はぁ、はぁ、あっ……」

私は不意に身体が後ろに傾くのを感じました。

このままじゃ寄り倒しで負けてしまいます。



……いやっ! 負けちゃうっ! 負けたくないっ!



私は目を瞑り無我夢中で身体を捻りました。

次の瞬間、肩口から土俵の外に倒れた衝撃を感じました。

「はぁ、はぁ、はぁ……」

「はぁ、はぁ、はぁ……」

気が付くと、私は枝里子さんに抱きしめられていました。

土俵下に倒れていて、軍配は……私!?

「はぁ……はぁ……本当に強くなったわね……良い相撲だったわ……」

枝里子さんは一度ぎゅっと私を抱きしめると、そっと立ち上がりました。

その瞬間、私は理解しました。

枝里子さんは最後の最後まで勝負を捨てなかった私に、勝ちを譲ってくれたんです。

私は泣きそうになるのを堪えて決然と立ち上がりました。

今日の勝ち星は、ただの勝ち星じゃありません。

もっともっと、いろんな事が込められた勝ち星です。

相撲の何たるか、隠相撲の何たるか、闘いのなんたるか、勝ち負けの何たるか。

枝里子さんはその全てを込めて、私と全身全霊で相撲を取ってくれたんです。

私は枝里子さんから、かけがえの無いものをたくさん受け継いだ、枝里子さんの妹弟子です。

だから、私は堂々と勝ち名乗りを受け、手刀を切りました。

枝里子さんは微笑みながら私を見ていていました。




「私は、絶対に強くなります!!」







渡邉しずかの戦績


四日目終了 三勝一敗


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