相撲の力 2−1
入学式、部活勧誘会が終わり、仮入部期間の二週間が過ぎた。
予め決めていた者、散々に迷ったものを含めて本入部が決定していく。
そんな中、学校内を震撼させる事が起こった。
震源地は当然、悠里だった。
仮入部期間、高校の中で使用されていない体育館裏の広場。
なんと悠里は、今までのプロでの試合で稼いだギャラを使って、
自腹でプレハブと、その中にプロレスリングを作ってしまったのだ。
そして、準備を万全にした上で女子プロレス同好会の設立まで宣言。
既に高校生の規格外の行動。
在校生全員が耳を疑うなか、悠里は相変わらず堂々と校内を闊歩し、
横では常に肩を落としている月葉の姿があった。
「悠里さん……道場に行けば済む話なのになんであんなことを……」
「だって目立つでしょ?」
「それは目立ちますけど……」
「なら、プロとして合格!」
「そういうことじゃなくて……」
月葉の気がかりなど、悠里の知るところではないらしい。
いや、知っていても気にしないのが悠里という存在だ。
「ま、しょうがないよ。校長せんせーとの約束だし」
「約束……ですか?」
「うん」
この学校の校長が、かつてレスリングで名を馳せたというのは有名な話。
また格闘技好きでも有名な校長は、悠里の面接試験のときに、
プロレス同好会の設立を相談されていたのだ。
既にプロの第一線で活躍している悠里に会長になってもらえるように頼み、
プロレス人気復興の草の根運動をしてほしいと。
悠里はこの条件を飲み、推薦入学が決まった。
はっきり言って、違法だろう。
「ま〜、私立だからね〜。プロレスを知ってもらう為の活動の一環みたいなものだよ」
「…………逮捕されないでくださいよ……」
月葉の気苦労はまだまだ増えそうな気配だった。
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