相撲の力 2−2
「何考えているのよ、あいつは!!」
桃は語気を荒げながら、
見つけたプロレス同好会の勧誘チラシを掲示板から引きちぎった。
「桃ちゃん、そんなことしたらダメよ」
瑠璃子が諌めるが、桃は既に手の中でチラシをぐしゃぐしゃに丸めていた。
屈辱の相撲から既に2週間。
桃はずっとモヤモヤとした時間を過ごしていた。
油断していなければ、あんな無様な取り組みはしなかった。
もう一度やれたら絶対に勝っていた。
この思いは晴れることなく付きまとっていた。
それにつけて、自腹リング作製に校内に貼り付けられたプロレス同好会のチラシである。
激高しないわけがない。
「ちょっとプロで活躍しているからって……ただの目立ちたがりじゃない!!」
「そうかもしれないけど、だからと言って誰も彼女を批判する事なんて出来ないわ。
うちは同好会も全て認めているのが校風なんだから」
瑠璃子は冷静に桃を諭そうとするが、桃子の気持ちは治まる様子がない。
「だからってこんなの……」
「桃ちゃん!!」
まだ収まらない桃に、瑠璃子は珍しく強い口調で制した。
瑠璃子とて、負けられない時の敗戦がどれだけ悔しいかは分かっているつもりだ。
隠相撲の中で、静香静音の姉妹や隆美やエリカのように、
自分は天武の才に恵まれているわけではない。
勝ち越せるときもあれば負け越すときもある。
何度瀬戸際の相撲で負けたことか。
ただ、悔しさにかまけて周りを見るのを忘れてはいけない。
今回の悠里の行動が、どれ程のリスクを生み出しているかは、
彼女自身が一番分かっているはずなのだ。
新入生が目立った動きをするということは、どんな人間からも目をつけられるということ。
彼女はこのリスクを背負って、今回の動きをしているのだ。
だからこそ、個人的な感情だけで言葉を吐き出す桃のことを我慢できない。
「悔しいなら、ちゃんと相撲で返すべきでしょ。
これ以上そんな言葉を出すなら、いくら桃ちゃんでも許さないから」
「瑠璃ちゃん……」
「……スジをしっかり通そう。あたし達は、曲がりなりにも土俵に上がる人間なんだから……」
「…………わかった…………ゴメン……」
瑠璃子の言葉に、桃はシュンと肩を落とした。
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