相撲の力 2-3







リベンジの機会は、思わぬ形で訪れた。



悠里が更なるデモンストレーションとして、



あの名台詞「いつ、なんどき、誰の挑戦でも受ける」を引用したのだ。



ただし、本当に来られたら困るからか



「プロレス同好会が練習している間は誰の挑戦でも受ける」と宣言した。



しかも、自腹を切った練習場のプレハブを賭けて。



単純に言うなら、悪戯されるのを防ぐ為だろう。



だが効果は絶大だった。



別に興味が無いが生意気と言うだけでイジメを吹っかけようとしていた人間は、



悠里があまりにも全校生徒から注目されている為、下手な悪戯が打てない。



また、教師も特定の人間だけ警戒していれば良いと、見回りが楽になった。



荒らされると予想されたプレハブは、設置された監視カメラで落書きすら出来ない。



結局、悠里を妬ましく思う人間は表立って悠里に挑むしかなくなっているのが現状。



しかもこの宣伝をしてから、悠里の評価は桁違いの上昇を見せている。



挑む人間も別にプロレス同好会を潰そうと考えず、



格闘技をするものとして、悠里に興味があったのだろうが、



あくまで高校生のレベルからは脱却できていない面々、



プロの第一線を経験して、実際に勝ってきた悠里のレベルではなかった。



ただし、プロレスをバカにして冷やかしにきた不良グループだけは、



一切付き合わない悠里にボコボコにされていたが。



新たなる悠里伝説が気付かれていく中、



いつのまにかプロレス同好会のメンバーも二人以外に増えていた。







「桃ちゃん、やめてってば!」



「何で止めるのよ! あたしはもう一度闘いに行くだけ!



 それがなんでいけないのよ!!」



「いけないとか、いけなくないとかじゃない!



 リベンジって簡単に言うけど、勝算あるの!?」



「そんなの関係ない!!」



悠里がどこの部を破ったという話を聞く度に、桃は過剰に反応していた。



それまで格闘系の部活は、お互いを尊重してきた。



ところが悠里はその全てを壊してしまったのだ。



桃にとっては、悠里の活躍が格闘系の部活への挑発にしか思えなかった。



桃はあの目立ちたがり一人のためにみんなが困惑するのは絶対に許せないと、



悠里と闘うために相手の土俵に上がろうとしているのだ。



即ち、相撲だけではなく何でもありの総合ルールで。



「……もうっ!」



瑠璃子は苛立たしげに足を踏んだ。



彼女が桃を引き止めるのは、部活勧誘のときの悠里の動きを外から見ていたから。



彼女は絶対に規格外の存在だ。



そう、例えるなら隠相撲の最強の横綱、隆美のような存在。



勝算すら考えず挑んで勝てるような相手なら、



相撲で桃が負けそうになる訳が無いのに。



いつになったら頭を冷やしてくれるというのだろう。



瑠璃子は何とか引きとめようと、再び親友の背中を追った。















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